姫は自由に生きている



ガチャリ


誰かが部屋に入ってきた


「恋、おはよう。気分はどう?」


英国紳士のような立ち振る舞い、街で見かけたら確実にキャーキャー騒ぐ王子様スマイル、嫌味なく着こなされた綺麗目なジャケットコーデ


「が、くくん……、?」


忘れもしない、公園で転んだ私を手当てしてくれたいつかの王子様、岳君だった


「少し薬が強かったかな?立ち眩みするよね。大丈夫?」


当たり前のように私が寝るベッドサイドに腰を下ろし、頭を撫でる岳君に違和感しか覚えない


「な……んで」


「ん?」


状況がなにも読めない


「俺のお姫様。相変わらず可愛いね」


ちゅっ、と髪の毛を一掬いしてキスを落とした岳君に身動きが取れなかった


「ど……して」


喉がカラカラでまともに声が出ない


「お水飲もうか。はい、どうぞ」


テーブルに置かれてたペットボトルを渡されたけど、身体が重くて起き上がれない


「っ……」


「少し薬の量誤ったかな…ごめんね恋。今飲ませてあげる」


女が好きそうな甘い顔


私には既に、目の前の男が恐怖の対象でしかなかった


私に渡した水を自分の口に入れると、そのまま近づいてくる


どうにも体が動かない私は、抵抗する余地もなく男にされるがままだった


少しあたたかくて柔らかい感触、同時に舌で唇をこじ開けられてそのまま流れ込んでくる生温い水


全部飲み込む事はできなくて、口元からたくさんこぼれ落ちる


「やっ…んっ…」


「飲めた?」


「はぁ…はぁ…」


ファーストキスは、いとも容易く奪われた


色気を含んだ目の前の男は、私の口元に溢れた水を拭って当たり前のように舐めた


「恋は俺の物だよ。誰にも渡さない。」


回らない頭で考えた

こいつから逃げる事が許されないのだと。

瞳をギラつかせる目の前の男に、頭の中でサイレンが鳴った