姫は自由に生きている



「久々に息子、って聞きましたね。"父さん"」


恵もまた、騎士と同じように普段あまり見せる事のない完全に気を許した人間にのみ見せる柔らかい表情だった


「お前が会いに来ねえからだろ。寂しくて泣くぞ」


「分かっているでしょう?色々忙しいんだよ」


「なにもあそこで寝泊まりするこったねーだろ。お前の家はココなんだから」


「帰りたいのは山々だけどあそこを離れると心配で眠れなそうだから…」


「……希龍の奴らはお前の中で何歳児だよ」


「精神年齢は目が離せないくらいかな」


普段敬語を使う恵が、敬語を外す瞬間は
怒った時と、騎士の前だけ


実の親に敬語を使えと躾けられてきた恵のこの癖は今も健在だが、出来が悪いと幼い恵はあっさり捨てられ
そんな恵を見つけて拾い、自分の息子同然で大切に育ててきた騎士は、まず始めに恵の敬語を治すところから始めた。


どうにかして騎士の前では敬語を外せるようにはなったが、それ以外はまだ無理らしく

それでも大切な仲間を見つけ成長していく恵を騎士は優しく見守っていた


「随分と大きなガキをたくさん育ててんだな」


「ほんと手が掛かって大変ですよ」


久々の和やかな会話は、ここで終わった


情報屋の父に育てられた息子は、まさしく"そっち"の教育も受けている


本題に入るタイミングは、話していれば空気で感じられる



「さて、本題入るか」