姫は自由に生きている



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午前1時


繁華街の裏路地にひっそりと明かりをつける1つの店


カランコロン


来客を知らせるベルの音を鳴らして入ってきたのは天才ハッカーと謳われる男だった


「お前が来るなんて久しぶりだな?恵」


「お久しぶりですマスター。」


ここのマスターをしている男はこれから客の言う言葉が分かっていた


なんせここは情報屋が運営するバー

客のほとんどがマスターに情報を買いに来る


恵と呼ばれた男はカウンター席に腰を下ろし拘りがないのかオススメの酒を頼んだ


店内にはマスターと恵の2人だけ


「俺以外に人が居ないの珍しいですね」


「お前が来ると思ったから今日は貸切だ」


「ははっ。さすがですね」


「希龍は楽しいか?」


「勿論楽しいですよ。手の掛かる連中しか居ないですけど」


「そりゃあいい。俺も安心だ」


マスターは仕事中に見せる事のない優しい眼差しを恵に向ける


「それで本題なんですけど…」


「分かってる。お前の欲しい情報はここにあるさ」


「相変わらず完璧ですね」


「あったり前だろ。天下の情報屋Ritter様だぞ」


「分かってますよ、"騎士さん"」


『Ritter』 ドイツ語で騎士と言う意味がある


そしてこのマスターの本名こそが騎士


それを知っているのはごく僅か


「さすが息子だ」


恵の頭をクシャクシャと撫でる騎士の表情は、完全に父親だった