姫は自由に生きている




次に目が覚めたのは、微かに美味しそうな匂いがしたからだった


この状況でも身体は正直らしくてお腹は空く


「姫起きましたか。うどん作ったので食べてください。胃の中が空のままは良くないです」


「………」


部屋を見渡すとヤツの姿はなく、居たのは新島だった


どうにも、ここで手作りのご飯を食べるのは少なからず抵抗がある


無言でうどんを見つめていると、新島は箸でうどんを一本食べた


「あの方は今仕事で席を外しています。食事に怪しい物はさすがに入れません。安心して食べてもらって平気です」


この男はエスパーなんだろうか、?


わざわざ新しい箸も用意している辺り、私が疑って手を付けないのも予想していたんだろう


おずおずと私はうどんに手を伸ばした


さすがにお腹空いたし、ここで野垂れ死ぬわけにはいかないし。



「おいし……」


「良かった。やっと喋りましたね。」


「あっ……」


自然と溢れた言葉に、新島が少しだけ表情を緩ませた


「たくさん食べてください。私にはこれくらいしか姫に出来る事がありません」


「………」


新島は、きっとヤツに囚われ続ける私が可哀想なんだと思う


いくら忠誠を誓っていたとしても新島には人の心があるらしいから


ヤツが居ない時だけ、こうしてほんの少しの味方になってくれる



理由は知らないけどヤツに忠誠を誓い続ける限り大嫌いだけど、昔も新島しかここで頼れる人は居なかった



「あと30分で帰って来ます。……あの方の姫に対する執着心を舐めない方がいい」



これから起きる事が安易に想像出来た


新島はヤツに逆らえない。助けを求めても無駄。


つまり私は、これから先起こる事を嫌でも受け入れなくてはならない。



「また明日、食事を持ってきます」




新島は死刑宣告をして部屋を出て行った