姫は自由に生きている



コンコンコン


静寂を破ったのは、ノック音だった


「入れ」


「失礼します」


「……何人だ」


悲しいことに言われずとも、報告される内容が分かってきたこの頃


「5人です…っ!」


悔しそうに唇を噛み、絞り出した声で答えたのは毎日被害報告をしに来る幹部候補のアズマ


「状態は?」


「4人骨折。1人はまだ…意識が戻ってません……」


「まずいですね。どんどん向こうの攻撃も過激になってきている。」


「あと…これ。やられたタカの手に握らされていたみたいなんです」


アズマから受け取ったのはなにかのメモだった



【返してもらう】


たった一言

アイツからの宣戦布告だった


「くそっ!!!」


「右京どうしたんですか!?」


ガンッ!と机を蹴った俺にただ事ではないと察した恵達



「アズマ」


「は、はい!」


「しばらく全員学校休ませてここで寝泊まりさせろ。迂闊に出歩くんじゃねえぞ。いつでも闘えるように準備しとけ。」


「わ、わかりました!!失礼します!」


90度綺麗に腰を折って頭を下げたアズマは部屋を出た


「右京、なにが書かれてたんですか」


俺は静かにヤツからのメモを出した


「"返してもらう"って、まるで自分のモノかの言い草ですね。一体なにを?」


「…………」


「右京、知っているんでしょう。メモの主もなにを指すのかも」


恋、どうやらタイムリミットが迫ってるみたいだ


これ以上隠し通すのは厳しいらしい。


魘されている恋の頭をそっと撫でて、万が一の為に耳を塞ぎ俺は覚悟を決めた


「……ヤツの名前は田中岳。狙われているのは恋だ」



ゴクリ、誰かが唾をのんだ