「恋の警備を強化しろ。徹底的に守れ。あいつを絶対に1人にさせるな。」
右京は、目を閉じたまま低い声でそう言う。
もう何度も聞いたセリフだが、今までより言葉の重みが違う気がした。
「分かった。面子には伝えとく」
「家でも1人にさせるな。学校なんてもっての他だ。トイレであろうと着いて入口の前で警備させろ。」
「それはさすがにやりすぎじゃない?」
「あ"ぁ!?恋を守るためなら手段は選ばない。そう言ったはずだ。誰になにを言われようと変える気はさらさらない。迷惑をかけてるのも承知だがこれだけは譲らねえ。」
トイレの入り口で待たれるのは、いくら守るためであれど嫌だと思って右京に抗議すれば突然怒鳴りだした。
24時間警備を張らせて1人にさせるな、って恋さんもまた苦痛になって悪循環に陥ると思うんだけどな…
「家は安全だと思うけど」
「逆だ。家で1人の方が尚更危険なんだ。」
「どういうこと?」
「インターホンを押して宅配業者を名乗ればすぐに扉を開けて一瞬で攫われる。恋の連絡先を流されていれば、俺たちの誰かが捕まったから1人で助けに来いだの言われて恋は1人で家を出てそのまま捕まって終わりだ。常になにがあるか分からねえんだよ」
「そんな大袈裟な」
「大袈裟じゃねぇ。これは、俺の意思でもあるが琳さんの意思でもある。」
「琳さんの?」
「あぁ。あの人も恋を守るためなら手段なんて選ばない。ただ恋を守れさえすればそれだけでいい。」
まさか琳さんまで出てくるとは思わなかった。

