姫は自由に生きている



幹部室に戻ると案の定恵達が俺が来るのを待っていた。


「右京」

「…分かってる」

恵の鋭い視線を受けながら椅子に座る


「恋さんを独り占めしたい、なんて理由で1ヶ月近くもここを黙って空けていたんじゃないですよね?」

「……さあな」

「正直に答えて下さい」

「……ああ」

「じゃあなんで?」

「それは教えられない」

「じゃあ、不安になりながらずっと右京と恋さんの帰りを待っていた面子になんて説明するんですか?」

「……」

じりじりと俺を追い詰める恵は、黙って居なくなったことで相当キレているらしい。

希龍の中で怒らせてはいけない人物No. 1を俺は今敵に回している。


「2人で一体どこに居たんですか?俺たちがどんなに探しても見つからなかったです」

「……俺の家」

「なるほど。どうりで見つからないわけですね」

さすがに全部無視するのは俺も心苦しい

これくらいの情報ならいいだろう


「文化祭の日、俺たちが居ない間になにがあったんですか?」

本当にこいつはいつも核心を突いてくる

頭の回転が早くて周りの変化に敏感なこいつに隠し事をするのはさすがの俺でも厳しい


「………恋が倒れた。だからずっと俺の家で看病していた。」


恋が倒れた理由

それはつまり恋の過去について話すということ


"俺達"しか知らない恋の過去を、こいつらに安易に話すわけにはいかない

すまないがこれだけは無理なんだ。