姫は自由に生きている


リビングに行くまでのわずか30秒ほど

恋はそのわずかな時間ですら、俺の洋服にしがみついて離れなかった。

無意識に顔が緩んでしまうのも無理はない。

恋のことになるとキャラが変わるなと心の中で笑いながら、事前にテーブルに用意しておいた水を恋に渡す。


ゴクゴク

静かな部屋には、恋の水を飲む音だけが響く


「あ、りがと」

「あぁ。寝るか?」

まだ眠そうな恋にそう聞けば、首を横に振られる。

きっと、夢を見るのが怖いんだろう。


「そうか。なにかしたいことあるか?」

「ううん」

「風呂入るか?」

「…ん」

「案内する」

立ち上がった俺に張り付くようにくっついてくる恋


昔から恋は弱ってる時に甘えてくる癖がある。
裏を返せば、普段は全く甘えない。

だからこういう時は存分に甘やかすと、俺を含め"恋に魅せられた奴ら"は決めている。


「風呂場はここ。着替えとタオルは置いとくから入ってこい」

「右京は、居なくならない?」

「不安なら一緒に風呂入るか?」

ニヤリと笑えば、顔を赤くして

「バカ!」

と言って俺の胸を叩く


さっきまでの死んだ顔よりは全然マシだ。

いつもより回復が早いことにとても安心する。