姫は自由に生きている


『剣、今あいつらと一緒か?』

「…そうだよ。右京と恋は居ないけど。」

口にするだけで、気分が沈むのが分かる。

『スピーカーにして恵と新にも聞こえるようにしろ』

「なんで?」

『いいからさっさとしろ』

有無を言わさない、いつものチャラけた雰囲気ではない兄貴に逆らうのは危険だと判断した。

すぐにスピーカーにして、恵と新にも聞くようにジェスチャーで伝える。

『剣、恵、新、よく聞けよ。』

「「「はい」」」

『お前らの事だから、右京と恋が連絡なしに居なくなって焦ってるんだろ?』

「なんで、分かるんですか?」

俺らの状況を当てられたことに驚きを隠せない。

恵が聞けば

『んなこと簡単に分かるさ。お前らの事だって俺は理解しているつもりだ。』

兄貴らしい、そんな答えが返ってきた。

『それで、だ。右京と恋の事は心配いらない。』

「琳さんと一緒に居るってことですか?」

なら、右京が俺たちに連絡くれればいいだけの話なはずだ。

恵もそう思って兄貴に聞いてるんだろう。

『あぁ。右京がお前らに連絡出来ないのは今は手が離せない用事があるからだ。だから代わりに俺がお前らに連絡した。』

「用事とは?」

『それは教えねえ。でも、ここからがまぁ本題だ。』

ゴクリ、誰かが唾を飲んだ。

『暫くその"用事"で右京と恋は倉庫にも学校にも行けねえ。そして、お前らにも暫くは会えねえ。』

「どうしてっ…!?」

なんでなんでなんでなんで

右京と恋が暫く俺たちに会えない
なんでその理由を兄貴は教えてくれないんだ

『それは教えねえ。そう言ったはずだ。』

現役の頃と何一つ変わらないその威圧的な低い声に、弟の俺ですら怯む。