幹部室に戻ると、どうしようもなく手が震えた。
「来て、なかった」
「「………」」
右京が恋を独り占めする為に、勝手に居なくなった可能性だってゼロではない。
だけど、俺たち3人がここまで焦るのは理由がある。
普段は無口だし何を考えているのか長年一緒に居る俺たちですら分からない時がある右京だが、何かあれば連絡は絶対にしてくれるしそれを伝え忘れる事も、黙って居なくなる事も今まで一度もなかったのだ。
だけど、今まで一度もなかったはずのそれが今起きている。
だから俺たちはこんなにも焦っているのだ。
なにかあったのではないかと。
ましてや、恋も一緒の可能性があるとすれば尚更だ。
"なにか"が起きている
そう考えるのが妥当だろう。
きっと、難しい顔でパソコンを弄りだした恵と騒がずに黙ったまま目を瞑っている新も考えている事は同じだ。
そんな静まり返った幹部室に、ピリリリリと俺のスマホの着信音が響いた。
電話相手の名前を見ると、兄貴だった。
「剣、誰から?」
「兄貴から。悪ぃな」
「いいよ。出な」
「あぁ。ーーもしもし?」
恵と新に断り、その場で兄貴の電話に出る。

