右京side

俺は倒れた恋を抱えて、琳さんに電話をかける。

「もしもし、俺」

『右京か。なにがあった』

疑問ではなく肯定。
そうなるのも当たり前だ。
俺から琳さんに電話をかけるのは、恋になにかあった時だけだから。


「今すぐ出来る話じゃないから後で話す。とにかく恋が倒れたから誰にもバレないように裏口に車を回してほしい」

『分かった。話は後で聞く。5分で着くから待ってろ』

「了解」

杉咲家から学校までどんなに頑張っても5分で着くわけがないから、恐らく近くに外出していたんだろう。

腕の中で意識を失っている恋を見て、どうしようもない気持ちになる。
ただただ、胸が苦しい。

「ごめんな、恋」

この時間だとまだ後夜祭は終わっていない。
俺にしたら好都合。
剣達への連絡も悪いが後回しだ。

とにかく、今は誰の目にも留まらずにここを出る必要がある。

恋を俗に言うお姫様抱っこをして、静かに屋上を出て裏口へと向かう。

体育館からは生徒の歓声やらが聞こえる為、どうやら大丈夫なようだ。

裏口へ着けば、本当に5分で来た琳さんが既に待っていた。


「琳さん」

「あぁ来たか。とりあえず乗れ。」

「はい。」

俺に抱かれている恋を見て、状況が穏やかではない事を察した琳さんは顔が険しくなる。