姫は自由に生きている


「恋」

「ん?」

「楽しいか?」


宣伝する為に張り切ってた剣達は人の波に飲まれてはぐれてしまった。

右京と2人でガヤガヤ賑わう校内を歩いている為、周りに私達の会話が聞こえることもない。

「楽しいよ。すっごく」

「なら良かった」

頭をポンっと撫でた右京に、周りから悲鳴が上がった。

「え?やっぱあの2人って…」
「仕方ないよお似合いだもん」
「勝てっこないって」
「私達じゃ右京様の隣に並んでもモブになるだけだし…」
「杉咲さんも劣ってないもんね…」
「付き合ってない方がおかしいよ」
「だって姫でしょ?」


話してる内容、結構聞こえてるんですけど、、

「こっち」

私達の周りに人が集まってきた為、右京が私の手を引いて早歩きで歩き出した。

それに対しても悲鳴が上がるわ上がるわ。

少し歩いてたどり着いたのは、立ち入り禁止と書かれた文化祭で使われなかった空き教室。

「右京疲れたでしょ?休もっか」

昔から人の多い場所が嫌いで、行けば疲れてぐったりしたり酷い時は吐き気に襲われたりしていた右京。
たくさんの人が通う学校も例外ではない。
昔からあまり行っていなかった。

壁に寄りかかって座った右京の隣に私も腰を下ろす。

さっきまで盛り上がっていて人の多い場所に居たのに、今は人の気配がしない。
まるで私達だけが切り離されたような不思議な空間。

「恋、膝」

「はいはい」

右京はそう言って私の膝に頭を乗せて寝転がった。
所謂膝枕ってやつ。

みんなで文化祭楽しみたかったけど、まだまだ時間あるし今はいいよね。

目を瞑っている右京が寝ているかは分からない。
それでも私は右京の頭を撫でる。

「ねぇ右京」

「………」

「もし"あの時"、私が強かったら今なにか変わってたかな?」

「………」

「今もね、夢に見るの。忘れた事なんて一度もない。」

留学していた頃も毎日必ず夢に出てきた。
まるで、忘れるんじゃないという戒めのように。

「私が死んでれば……」

何度も思って後悔した。

「それ以上言うな。」

「なんだ、起きてたのか」

「恋はなにも考えず、ただ俺の隣に居ればいい。
俺が守ってやる。そう言っただろ?」

「そう、だね」

いつの間にか目を開け、下から私を真っ直ぐ見つめている右京。

その瞳から、何度逃れようと思ったか。
右京には分からない。

きっと、一生分かるはずがない。