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琳side


「やっぱ帰たーー」

「逃げんのか?」

「……………逃げない」

「それでいい」

「でもっ!」

「なんだよ」

「………なんでもない」

「ほらもうすぐ来るぞ」


場所は俺が昔から行きつけのバー。
今は昼間だからもちろん開店していない。
だけどマスターは良い人だからここを開けてくれた。

今日はそう。恋が前に進む日。

とでも言っておこうか。


緊張して帰たいとほざく大切な妹はずっと落ち着かない様子。

まぁ無理もない。

こないだ再会したのは一瞬で、こうして向き合うのは"あの日"以来なんだからーーーーー


カランカラン

来客のベルが鳴る


「おまた〜。待った〜?」

「待ったさおせぇんだよ」

「えぇ〜そこは『俺たちも今来たところ』っていうところだろ〜よさ〜」


ぶーぶー文句を言うこの男は高町圭介。

隣に座る恋はカチンと固まってしまった。

「恋、久しぶりだね。まぁこないだも少し会ったけど〜」

「ひ、ひひひひ久しぶり……圭介」

「噛みすぎよ恋ちゃ〜ん。もっとリラックスリラックス〜」

「う、うん」

いつもの恋らしくないのも無理はない。

きっと"あの日"の光景でもフラッシュバックしているんだろう。