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「もしもし。恋の事なんだがーーーー」

男は、たった一人の大切な妹の為に動き出す。

「まずはお前に会って話しねぇと始まらねぇだろ?よろしくな」


大切な妹が、柵から解放されるように。
大切な妹が、また傷つかないように。

二度と、同じ過ちは犯してはならない。


電話を切った男は、弟の元へ行く。

「兄貴…恋は?」

「しばらくそっとしといてやってくれ。あいつらにもそう言っとけ。」

「……俺、嫌われたかな?」

「んなわけあるか。恋はお前が大好きだからこそのダメージを受けたんだ。」


"それが引き金になったってだけの話なんだけどよ。"

その呟きは、弟…もとい剣には聞こえなかった。


剣は薄々気づいている。

自分の姉が自分の知らない"なにか"を抱えていることに。
そしてそれは、自分以外の家族全員が知っていることに。

だけど、それは聞いてはならないような気がして聞かない。

剣は大人しく兄である琳の言葉を素直に受け入れた。