琳はあれから仕事を休んで一日中私の隣に居てくれる。
お母さんもお父さんも私を気にかけてくれている。
私は、みんなに甘えてばっかだ。
一日をぼけっと過ごして、寝て悪夢を見て起きて隣を見たら心配そうな琳が必ず居て。
そんなのを何回繰り返しただろう。
気づいたら剣が退院して帰って来る日になっていた。
「ただいま恋!」
「……おかえり、剣」
剣は抜き糸も終えたらしくピンピンして帰って来た。
元気な姿に安心した。嬉しかった。
でも………いつも通りには振る舞えなかった。
「恋…?」
俯く私を心配そうに覗き込む剣に、あの日の青白く生気のない顔で横たわる剣の姿がフラッシュバックして後ずさってしまった。
「ほら恋、部屋の片付けの途中だったろ?お兄様が手伝ってあげるから戻るぞ」
「ん。」
琳のフォローで私はすごい救われた気持ちになった。
ごめんね、剣。
剣の視線が背中に刺さる。
「剣おかえりなさい。恋ちゃん守って偉いじゃない!!さすが男ねぇ」
そんな剣にお母さんが意識をずらしてくれた。
私は琳と部屋に戻ってベッドに寝転がる。
「だめだったか」
「…………」
「剣には俺から言っとくから。」
「………どうしたら、強くなれるかな?どうしたら、成長できる?」
「……お前のペースでやってけばいい。誰もお前がすぐに成長するのを望んでない。気づいた時に成長したなって思えるくらいでいいんだ。」
「…………」
「なぁ、お前が出て行く前、どうしてあいつを倉庫に連れて来たと思う?」
「……私に会わせるため」
「分かってるじゃねぇか。まずはあいつと向き合う事が、成長への第一歩なんじゃねえの?」
「………かもね」
「会うか?」
「………うん」
なにかが、動き出すかもしれない