"あいつ" "二度目"

多分、恋さんの過去に関わっていることなんだろう。

だとしたら、右京は恋さんの過去を知っている…?

二人はいつから知り合いなんだ?

疑問がグルグルと頭の中を駆け巡る。

新も話についていけてない様子。
だけど、そこで口を挟んではいけないと分かっているからなにも言わない。


重たい沈黙の中、手術室の扉が開いた。

「先生剣は!?」

「ご家族の方ですか?」

「兄です。こっちが剣と双子の姉で。」

「わかりました。仲間の方にも話しておきましょう」

ここはよく希龍の奴らが怪我をした時に利用する病院で。
だから医者も俺たちを邪険に扱わない。

「杉咲さんは刺された傷もそこまで深くなく、応急処置をされていたおかげで幸いにも酷くありません。今は麻酔が効いてるので眠ってますがあと数時間したら目も覚めるでしょう。後遺症もないと思います。それでは。」

「よ、かった……」

そう呟いた恋さんは安心からか崩れ落ちた。

それを上手くキャッチした右京は恋さんを椅子に運んで座らせた。

剣もストレッチャーで病室まで運ばれていき、俺たちも病室に入ることにした。

「剣…剣…剣…」

恋さんは眠っている剣の手を握ってずっとこの調子だ。

ーーーまるで壊れた人形のように

琳さんと右京は、そんな恋さんを悲痛そうに見ている。

「恋。大丈夫…目瞑って。そう。深呼吸して…いい子だ。おやすみ。」

行動に移したのは琳さんで。

恋さんを背後から抱き締め恋さんの目を覆った。

恋さんは力が抜けたように琳さんに身体を預けた。
恐らく寝たんだろう。

あんな言葉だけで……それは恋さんが琳さんをとても信頼している証拠だ。