姫は自由に生きている


サイレンの音に背を向け俺たちはそのまま剣の運ばれた病院へ向かう。

面子は現地で解散させた。

今日は急でいつもの車が用意出来なかったから右京以外の奴らは全員バイク。

右京と恋さんを車に乗せて向かった。

だからーーーー
『どうしようっ…!私の所為でっ…』
『恋の所為じゃない。』
『また"あの時"みたいになったらっ…!!』
『……そんなことはさせねぇ』
そんな2人の会話を、俺たちは誰一人として知らない。


病院に着いて俺たちは手術室に向かった。

「琳さん剣は!?」

真っ先に椅子に座って手を握り祈るようにしていた琳さんに声をかけたのは新だった。

「今は待つしかねぇ。お前達も落ち着け。恋は?」

「恋さんは右京ともう少ししたら来ます」

「そうか………」

その会話の数分後、右京と後ろをトボトボと歩く恋さんが来た。

「恋……」

「け、んは……?」

「大丈夫。大丈夫だ恋。」

「うっ…ひっく……ご、め、なさい…ごめんなさい……っく…ひっく……」

琳さんは恋さんが来るなりそっと優しく抱き締めた。

「恋落ち着いて。大丈夫。」

「"あいつ"がっ……"あいつ"がまたっ…!!」

"あいつ"

それを指す人物は一体誰なのか。

その"あいつ"という言葉を一瞬で理解した様子の琳さんが右京と目配せをしたのは何故なのか。

俺たちには分からない。

「右京、話せ」

「……恋を追いかけていたら途中で恋の前に車が停まった。中から出て来た男達に恋は連れさらわれた。」

目の前で起こりながらも助けられなかった事を悔やんでいる右京は、拳を強く握っている。

「車のナンバーを頼りに恵に探してもらいすぐに相手と場所は分かった。分かってすぐに俺たちは向かった。着いた時に恋は何故か一人で倉庫の二階で俺たちを待っていた。そのまま抗争が始まって下の奴らはすぐに決着が着いた。その後安藤とやり合って勝って、その時だ。今回の首謀者である新の元カノがナイフを持って恋の所に走り出したのは。そこを剣が庇って刺された。」

「そうか……」

琳さんは手術室の扉を見つめる。

恋さんは嗚咽しながらも落ち着きを取り戻してきている。

「今回の件については首謀者は新の元カノかと思ってたが裏で"あいつ"が手を引いてたらしい。恋が危ない。」


「わかった。俺の方でも調べておく。お前は恋を護れ。」

「わかってる。」

「"二度目"は、ないんだ。」

「………あぁ」