姫は自由に生きている


「30秒だけ時間あげる。答える準備しとけよ」

恋さんはそういうと右京の元へ行きポケットから勝手にスマホを奪った。

そして

「もしもし私。………場所分かってんでしょさっさと来て。剣死んだらお前の所為だから。……そう。じゃあね」

どこかへ電話をしてすぐに切った。

「恋」

右京の呼びかけに、恋さんは答えない。

「馬鹿女。誰の差し金?誰の指示で剣を刺した。言い分によっては殺すから。」


"だって私の大事な大事な弟を刺したのよ?"


恋さんにとって、剣が刺されたという事実は大きい。

だからこんなにキレているんだと、俺たちは思っていた。

ーーーその他にも理由があるなんて知らずに

「あ、アヤ知らないっ!本当に知らな「あ?」……ひっ」

「知らないわけないでしょ。こぉんな情報知ってたんだから。誰に聞いた」

「ひっ……男、だった。…突然アヤの前に現れて、健に取り入って杉咲恋を捕まえて杉咲剣を刺せって。そしたらアヤの願い叶えてやるって言われてっ…!あんたへの忠告は『周りに気をつけろ』。あんたの過去もあの男から聞いただけよっ!本当にそれだけなんだからっ!」


怯えながらも話した新の元カノ。
どうやら本当に馬鹿らしい。

「それであんたは見ず知らずの男の言う事聞いたわけ?はっ。本当救いようのない馬鹿ね。そんな男の言うこと聞いて。名前、知ってるんでしょ。教えなさい」

「…………田中岳。そう言ってた。」

ガンッッ

名前を聞いた瞬間、新の元カノが座り込んでるすぐ横の壁を蹴った恋さん。

「へぇ」

その声は、とても低く殺気を含んでいた。

「右京」

「分かってる」

2人にしか分からない会話。

心なしか右京もさっきより殺気を出している。

田中岳……どうやら調べる必要があるらしい。

「新。」

「な、なに?恋たん」

「お前が後処理しない所為で起こった問題なんだからちゃんとケリつけろよ。じゃないと股間握り潰すから。」

「ひっひぃぃ!分かりました!」

……男としては新に同情するが、今回の件は新の所為でもあるから仕方ない。

新は新なりにあの馬鹿な元カノとケリをつけてるらしく、俺たちは若干忘れていた剣の元へ行った。

……ごめん剣。

心の中でそっと謝る。