姫は自由に生きている


『恋。恋は僕のモノだよ』
『ほら恋。分かるよな?こっちにおいで』
『可愛い可愛い僕の恋』
『言うこと聞かないとどうなるか分かるよな?』
『いい子だ恋』
『殺してやるっ…殺してやるううう』
『一緒に死のう。恋』





「はぁ…はぁ…はぁ…ゃめ…」


思い出したくもない過去の光景がフラッシュバックする。

耳を塞いで現実から逃げようとした私を繋ぎ止めたのは、

「れ、ん…だいじょ、ぶ?」

振り絞ったように声を出す剣だった。

「け、ん…?」

「よかった……俺、ちゃんと守ったよ……」

「剣?ねぇ剣!どうしたの?ねぇってば!!」

剣はそう言って、私を抱きしめていた腕を解きズルリと倒れた。

剣のお腹からは血が流れている。

「あっははははは!だから言ったじゃない!自分の周りには気をつけろって!あはははあはははははははは」

馬鹿女は狂ったように笑っている。


……あぁ、やっと状況が読めた。

剣は馬鹿女から私を守る為に刺されたんだね。
私の大事な大事な剣を刺した馬鹿女。

「ふふっ」

「恋?」

右京のそんな声なんて聞こえない。

「あんた、昔殺されかけたんだって?それがトラウマで海外に逃げたんでしょ?あはははははは!ばっかみたい!人殺し!」



その言葉に、私の中のナニカが切れた。