「ねぇ新。分からないなら教えてあげる。自分の名前はね、親から貰う最初のプレゼントなんだよ。」


「名前……」


母さんが、昔言っていた。


『新って名前はね、お父さんと一緒に新を授かった時に考えた名前なの。"何事にも新しく挑戦していける強い子になりますように"って』


遠い、色褪せた過去の記憶


「生まれたばかりの赤ちゃんはね、なにもできないの。誰かに育ててもらって栄養貰わないと死んじゃうの。新はなんで今生きてるの?お母さんが、新をちゃんと大切に育ててくれたからじゃない。」


ここまで言ったら分かるでしょ?話し終えてから初めて見る恋ちゃんの笑顔。


「俺っ………」


堪えていた涙がポロポロと止まる事なく溢れ出る。


「思いっきり泣いてスッキリしな。今まで一人で頑張ってきたんだから。今ここに私が居るから。我慢しなくていいんだよ」


恋ちゃんは俺に向かって腕を広げて受け入れてくれた。


「うっ…うぅ……うわぁぁぁぁ」


感情に任せて恋ちゃんの胸で泣いた。


そんな俺を嫌な顔一つせず受け入れて、落ち着くまで離れないでくれた恋ちゃん。


「落ち着いた?」


「……ありがとう」


誰かの前で泣いたのは初めてで。今更ながら恥ずかしくなった。


「まぁ、一つ言えるのはその女遊び控えることね。知り合いの新によく似た男、女関係で一回刺されてるから。そうなりたくなかったら女少しずつでいいから切りな」


「えぇ〜わかった〜」


「どうせ切らないくせに」


返事だけ一丁前、とはにかんだ恋ちゃんに


ドキッ


何年ぶりかに、心臓が活発に動き出した。


俺はどうやら単純らしい。


「恋ちゃん俺頑張るね」


「うん?がんばれ?」


必ず落として見せるから。

右京なんかに渡さない。


その後暗くなってきたので恋ちゃんをちゃんと家に送り届けた。