呆れつつ、ゆとりちゃんの図太さは健在だな…と思い、自分の仕事に取り掛かったのはいいけど、絵里から聞いた同窓会での失態が目に浮かんできて、思うように仕事が捗らずこの有様となった。


一ノ瀬圭太がオフィスの専属デザイナーとして紹介された日、私が同窓会で彼に頼み事をした様なことを聞いたけど、それは一体何だったのか。

恨み辛みを立て並べた後で、泣きながら零した言葉が頼み事のように聞こえたのでないか。



「ああ、それしても私、一体あいつに何を話した?」


頭の中に思い浮かんでくるのは、一ノ瀬圭太が転校した後のクラスの状態。

お山のボス猿が急に居なくなったことで、統制の取れてたクラスメートは一気にバラバラになり始めた。



「大田、この危機を脱するにはお前の力が要る!」


担任に二学期も学級委員をやってくれと泣き付かれ、「ええ〜〜!?」と言いながらも引き受けさせられた。


そこから苦悩は始まった。
クラスメートの男子達は言うことを聞かない山猿ばかりで、何かと言うと反発して内乱を起こす。

二学期は体育祭や文化祭、スポーツ大会…と行事がやたらと多いのに、少しも纏まってやろうとしてくれない。

一ノ瀬圭太の代わりを頼まれた男子の学級委員はお飾り的な存在で、彼ほどの統率力もなく、ほぼ私一人がクラス運営に飛び交ってばかりいた。


「女子のくせに生意気だ」

「ハブしてやろうぜ」