「…それでね、どうやら許嫁みたいな恋人もいるんだって!」

「あ……ふ、ふぅん。そうなのぉ…」


必死で感情がブレないように努力した。

それは何となくだけど知ってる。


でも、こうして具体的な言い方をされると実感が湧くというか……。



「あの一ノ瀬君の相手ってどんな美人だろうね」

「さ、さぁ…会ったこともないから想像も出来ないよ」

「美晴、今度彼に会ったらそこんとこも詳しく聞いて教えてよ。じゃあ私はそろそろ戻るから、また話そうね」


「うん。ありがとう。またね…」


耳から離した後、ディスプレイ画面が暗くななるまで眺めた。


一ノ瀬圭太の恋人というか許嫁なんて、私にとっては誰でもいい。



(要するに、気軽に食事したり話したりできない人だって意味でしょう……?)


頭の中にこの数回のことが浮かんだ。

同級生として再会した相手は、私が思ってる様な男じゃなかった。

彼は自分でも言ってた通り、ホントにハイスペックな男で……


どこかの知らない会社の社長の孫で?

政権争いに巻き込まれて転校した?

許嫁だか何だか知らないけど恋人もいて?

フリーのハウスデザインもやってる……。



「……そんな相手に啖呵切ってたの、私?」


しかも、あろう事か過去の恨みや辛みまで、酔った勢いで話した……?