「えっ…ウソォ!」

「そんなこと嘘ついてどうするのよ。一ノ瀬君マジで困って落ち込んでたんだからね」


今度会うことがあったら、きちんと謝っておきなよ…と言われた。
そんなことを聞かされたら、本人には電話もかけ難くなる。


「絵里ぃ…」


そんな大迷惑掛けてたなんて知らなかったよ。
私が彼に何かを言ったようなことは本人から聞いてたけど……。



(ど…どうしよう)


このままもう二度と会わない方がいい気がしてきた。
モデルハウスが出来上がれば、竣工式があるけど欠席したい。


「それよりもねぇ美晴、知ってた?」

「何をー?」


もうこれ以上、震え上がるようなことは聞きたくないよ。


「一ノ瀬君が中一の時に転校した理由」

「お父さんの仕事の都合……じゃなかった?」


ホッ。なんだ、そっちか。


「あのね、どうやらちょっと違うみたいな話を耳にしたの。男子らが話してたんだけど、一ノ瀬君て何処かの会社の社長の孫?だかなんだかに当たるらしくって、政権争いみたいなものに巻き込まれて、関東方面の学校へ行くことになったっぽい」

「政権争い?」


現在版の戦国時代か?


「今時そんなことってあるの?」


そう言いながらもふと食事した時のことが蘇る。


「お坊ちゃんなの?」と聞いたら膨れっ面をしてたし、「それこそどうでもいい話題」みたいな言い方もしてた。