すぐ側まで来てた彼女は、綺麗にメイクした瞼をパチッと閉じてからニヤついた。


「大田さんこそ何ですか?恋煩いでもしてるんですか?」


嬉しそうにしながらテンションの下がる言葉を放つ。


「誰が?そんなものしてないわよ」


一瞬ドキッとしながらも平静を装い、パソコン画面に向かう。


「そうですかぁ〜?昨日、私達を先に帰した後で、あのイケメンデザイナーさんと食事でもしたんじゃないですかぁ〜?」


ギクリと体が揺れそうになって持ち堪える。


「そんなことして無いよ」


くるりと向きを変えて答えた。
意識してウソを吐いてしまったせいもあり、つい言い方が固くなってしまう。

頬の辺りがスーッとしてくる。もしかして今、赤くなったりしてないよね…。


「本当にぃ〜?」


アユちゃんったらしつこい!


「そんなのはどうでもいいでしょ!仕事は進んでるの!?」


つい大人気なく怒鳴ってしまった。


「やってますよ〜、ほら〜」


手にしている書類を見せに来たらしい。
瓦を頼んだメーカーさんからの回答で、「これで予算を組んでもいいですか〜?」と聞かれた。


「…いいよ。お願いね」


さらりと目を通して預けた。


「は~い」


アユちゃんは間延びした返事をして逃げる。

私はこの最近になって、ゆとりちゃん達には得意分野があることを知った。