彼が言うところの「甘え」って仕事のことだったのか。


「誰もそんなことで甘えたいと思ってないからいい!」


意地を張って断った。
彼の申し出は確かに有難いことだけど嫌だ。



「本当に意地っ張りだな」

「これが私だから!」


ムカッとして言い返した。
一ノ瀬圭太は真面目くさった顔つきで私のことを見てたけど、不意に目線を下ろして「そうだったな…」と呟いた。



「大田はそうやって一人で頑張ってきたんだよな」


急に何!?
どうしてそこで憐れむ様な言い方をする!?


「いいよ、分かった。やるだけ頑張ってみろよ」


諦めたような言葉を投げ掛け、「それにしても」と言い直す。


「俺、なんか嬉しいよ」

「何が?」

「大田が何も変わってなくて」

「何よそれ」


相変わらず意地っ張りが嬉しいってこと!?
この人サドか何かなの!?


「またこうして同じ仕事をできるのも楽しいし、周りの連中は俺に刃向かってくることは無いけど、大田は体当たりしてくるから張り合いに繋がる」

「何よそれ。褒めてるの?」

「褒めてる。褒めてる。これ以上無いくらいにやり甲斐のある仕事にしてくれるから頼もしい」


「サンキューな」と笑ってお礼を言われた。
女子に対して「頼もしい」という言葉を使うこと自体も変だと思うんだけど。


「べ…別にそんなお礼を言われる筋合いでもないし…」