イジワルな彼と夢みたいな恋を?

最後の言葉を言い放った後、暫く三人の顔を見つめた。
私はそんな一ノ瀬圭太の顔を眺め、あの肝試しの時と同じだ…と思った。


彼は私のピンチを救ってくれてる。
あの時と同じく、まるで騎士(ナイト)のように……。



シーン…と場が凍り付いたように静まってた。

他部署の人達はお互いの顔を見合わせながら、どうすればいいんだろうかって目をしてる。

私は自分の後輩にも関わらず、適当な言葉を投げ掛けることすら躊躇った。

これは彼らの正念場で、逃げ出せばこの先の仕事は無くなる一方だと思う。


そしたらいずれは辞める日が近づくと思う。

その時になって、今を後悔しても遅い。





「………俺は出て行きませんよ」


口火を切ったのは橘君だった。


「このオフィスに入社するまで、相当の敗北感を味わいましたから」


その言葉を聞いて、アユちゃんの背中が伸びた。


「私だって同じです!なかなか仕事が決まらなくて、すっごく焦った」


「オレも一緒れす。この鼻詰まりの声を笑わなかったのは、ここのオフィスだけれした」


三人の声を力強く感じた。
視線を送られてる気がして、やっと彼らの方へ振り向けた。



「大田さん、すみませんでした」

「私、甘え過ぎててごめんなさい……」

「オレも。弛んでたと思う…」


「えっ……あの」


今ここでそんな神妙に謝られても困るんだけど。