「モデルですが、これまでの様に画一された間取りや内装には拘らず、オプションのような型式を取り入れてみてはどうかと思います」


指示棒を伸ばして説明する一ノ瀬圭太の話によれば、場所を変えないのは水回りと玄関付近だけだと言う。


「まるで注文住宅みたいな感じだが売れるのかね」

「コストとか、かかり過ぎませんかね」


営業部や販売部からは早速不安の声が出始めた。
私はちょっと心配になり、遠目にいる一ノ瀬圭太を眺めた。


「その心配なら大丈夫です。今日はその為に彼らの部署を呼びました」


(彼ら?)


…と思いながら目を向けると、視線の合った男からは、ふわっと優しく微笑まれて。


「資材部管理課の方達です」


指示棒を持つ手がポンと手を合わせるように叩かれた。
よもや、まさか、こんな形で呼ばれようとは……。


「資材のコストを最大限に抑えることで、この『我が儘な家』が出来上がる仕組みです」


「えっ…無理っしょ」


跳ね返るような声が聞こえ、私は横を向いた。
私の隣に腰を下ろしてる橘君は、アッサリとその理由を述べた。


「資材のコストを削減できる者なんて、うちの部署では大田さんくらいですよ」


……ちょっと待った!!
いくら何でも、私だけで出来る筈がない。


「俺らそんなノウハウ習ってません」

「いつも大田さんに指示されて動くので精一杯だしね〜」