秘蔵っ子?
いやいや、ただのゆとりっ子です。


(恥ずかし過ぎて表舞台にも出せない人達ですよ)


…とは、口が裂けても言えないから。


「後輩の橘と舛本、それから加藤です」


三人をそれぞれ手で示して教えた。



「よろしくお願いしまっす」

「初めましてー部長ー」

「加藤で〜す」


こらっ!と言って叫びたい。
そうでなければ、即刻穴にでも埋めてしまいたい。


「面白そうな子達だな」


部長、それは目一杯の褒め言葉ですよね!?


「とにかく中へどうぞ。他の課はもう皆来てるから」


デザイナーさんも居るよ…と言われ、私の胸はドキン!と弾む。


「いよいよイケメンデザイナーとご対面か」

「しまった〜。私もっと可愛い服着てくれば良かった〜〜!」

「写メらせて貰えるかなー」


ゆとりちゃん達は呑気で羨ましい。
これから先は、何が待ち受けてるかもわからないのに。


ドキドキ…と胸の鼓動を聞きながら、ミーティングルームと称したリビングへと進む。


この展示場には入社して一年間ほど勤めた経験がある。

土日祝日が必ず出勤日になることもあり、新人女子社員の登竜門みたいな場所にもなってる。


アユちゃんはまだここの仕事を経験したことがない。
だから、家を買うお客様の真剣さを知らない。


(それを知ったら少しは仕事ぶりも変わると思うんだけど…)