イジワルな彼と夢みたいな恋を?

囁かれてるな…と思う。


(私の勘違い?…じゃないよね)


クルッと振り向いたら声が静まり、前を向いたら始まる。



「あの人がそう?」

「ウソォ…どうして?」

「昨夜、一緒に帰ったんでしょ?」

「スゴく親しかったそうよ」


あーあ、これはどう考えても昨日の夜のことだ。
私は一晩経ったら夢です…と言われるのを期待してたのに無理そうだ。


オフィスに近づいた頃から視線は感じてた。
それは中学時代にも似た様な経験があったから、直ぐにでも察知できた。


昨夜の一幕を見た営業部の人達が、間違った情報を流したんだろうと思う。
そうでなければ、たった一晩でここまで噂が広がる筈がない。


何も聞こえないフリをして資材部管理課のドアを開けた。
中にはアユちゃん達がいて、仕事もしないで会話をしてる。



「おはよう」


三人の視線を無視してデスクに近寄り、トン…とバッグを上に乗せる。


「……あの…大田さん」


橘くんの声がして、何気なくそっちに目を向けた。
私の視線には威圧感があったらしく、彼が一瞬口籠る。


「何?」


言いたいことがあるならさっさと言って。
昨夜のことなら直ぐにでも撤回してやるから。


「あの…今さっき電話があって」

「電話?」

「はい。あの…販売部の部長さんから」

「ああ、岡崎さん?」


岡崎さんというのは住宅販売部でやり手だと言われてる部長さんで、私も入社して三年間ほどはお世話になった。