「まさかお前からそんなセリフを言われるなんて思わなかったぞ、大田美晴」


身長は軽く180センチは行ってんなぁ…と思われた。
確実に見上げなければならない位置に対面してる私のことを知ってるこいつは一体誰だ?


「忘れたのか、大田。こいつ、圭ちゃんだよ」


男の後ろから顔を出したのは、中三の時に一緒に学級委員をやってた坂上君。


「圭ちゃん?」


なんだか聞いたことがあるようで無いような感じ。


「圭ちゃん」というニックネームを思い浮かべながら、いつ聞いた名前だった?と記憶を呼び起こす。

酔っ払った頭ではなかなか難しいものがあり、「どこの圭ちゃんだった?」と聞き直した。



「もう最悪!落ち込むわ。俺」


鳶色の男はガックリと項垂れた。
壊滅的に傷付けたのかと思いきや、パッと顔を上げた。


「俺の名前は一ノ瀬圭太(いちのせ けいた)だ!」

「いちのせ…けいた……?」


えーと、先ずは「いちのせ」はきっと「一ノ瀬」で、「けいた」は多分「圭太?」かな。
何処かで聞いたような…。いや、よく聞かれた……ううん、叫んでたような……


「ねぇ、一ノ瀬くんって、もしかして一年の時に転校した人?」

「ああ、お父さんの仕事の都合とかで関東方面に行くって聞いた!」


「アッタリー!お前ら正解!」


坂上君の声が弾ける。
私はそれを聞いて、初めてハッ!と思い出した。