「何の話してんだ?」

「んーー?理想の男子はどんなのかって」

「ハイスペックな男性がいいねって」

「でも、居ないのよね」


「ね〜〜?」と、私が絵里と一緒に言い直した時だ。



「いるよ、一人。此処に」


滑舌のいい声が聞こえ、女子全員の視線が注がれる。

グレーのスーツに水色のネクタイを締め、糊の効いた白いYシャツを着て、如何にも清潔そうな感じがする男が自分を指差してる。

視線を上に移せば、冬なのに小麦色に焼けた肌。
ハワイでにも行ってたんですか〜?と聞きたくなるような肌色に、鳶色っぽい眼差しが輝いてた。


鼻筋は通ってて高い。
唇は薄くて端っこがきゅっと上を向いてる。

如何にも女子ウケしそうな顔立ちに、私達はぽかーん…と見惚れた。



「圭太お前、自分からそれ言うなよ」

「そうだ、そうだ」

「それ言ったらあかんだろう。女子に注目されんのお前だけになるじゃん」


「悪りぃ!つい口が滑った!」


鳶色っぽい瞳の男はそう言って笑った。

他の男どもはなんとなく見覚えがある。中学卒業後は接点が無かったから、名前までは思い出せないけど。

でも、この男の顔は見覚えすらもない。



「……あんたって、誰?」


思わず指差しちゃったよ。

すると鳶色の瞳をした男はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、ツカツカ…と私の前に歩み寄ってきた。