完全に受け身で指示待ち。

そのくせ定時では上がりたがる輩。

「上がる前に仕事だけはきちんとやり遂げていきなさいよ!」と言うのに、やって帰った試しは一度もない。


彼らの尻拭いで私は毎日残業続き。
長期休暇がきたら体調を崩して寝込み、回復と同時に同じ日々の始まり。



(もう仕事辞めたい。結婚でもして専業主婦にでもなろっかなぁ………なんてさ)


我ながら、本気で思ってもないけど考える。
アルコールに惑わされた頭では、ロクな事を考えない。



「飲み過ぎるなよ」


背後から声が聞こえ、「ん〜?」と唸りながら振り返った。

そこには小麦色の肌をした王子様がいて、冷めた目線で見下ろしてる。


「私の勝手でしょーが」


プイと横を向きながら反発する。

群れから離れてわざわざ来たの?
私みたいな者の側に来なくても、話し相手なら幾らでもいるだろうに。


こっちは再会も望んでないから話はない。
仕事上のストレスもあって、一人でゆっくり飲みたい気分なんだ。


「呂律回らなくなるぞ」


それくらいで止めておけ…とグラスを取り上げる。


「いいの!飲ませて!」


グラスを取り戻し、相変わらずの悪態をつく。

呆れ顔で立ってる男に、「知らん顔しておいて」と言い放った。


(あんたの知らないところで、私は散々苦労してきたんだから)