(……そうだ。そう言えばそんな過去もあった…)


今更か…ってくらいに思い出した。
現在の一ノ瀬圭太にはその頃の面影が一つもなくて、直ぐには思い出さなかったんだ。


(中学の頃もそれなりにモテてたけど……今もだな……)


女子達に囲まれ、グラスを傾けながら話し込んでる。
日焼けした肌の一ノ瀬圭太は、あの頃も今も、私にとっては遠い存在。


今頃再会したって遅い。
会いたかったのは今じゃなくてずっと昔。
十五年くらい前のことだ。



「……フン!」


盛り上がってる同級生達に背中を向けてオードブルの並ぶテーブルへ向かう。
一年ぶりに実家へ帰省したのは三十一日のお昼間で、それからずっと風邪を引いて寝込んでた。


毎年のことだから家族はすっかり呆れてる。
去年は嘔吐と下痢が酷くて、今年は発熱と頭痛が酷かった。


それでもこの同窓会には出たくて気力を振り絞って治した。
おせちもお雑煮も食べれなかったから、今夜は精々ご馳走を食べようと思う。




「うん。美味しい」


食事の味がわかるようにまで治ってくれて良かった。
休暇は明日までだったから、治らなかったらどうしようかと思ってた。


(それにしても来て良かったんだか悪かったんだか)


オカズを取り皿に乗せながら思う。

初恋の相手とは会わない方がいい…と、何かの雑誌に載ってた通り。