イジワルな彼と夢みたいな恋を?

思えばこいつに逆らってきたのも、他の女子と同じように好きになりたくなかったからだ。

好きになっても想いなんて届かない。

モテ過ぎて何人にも告られる様な奴。

富士山みたいに高嶺で高尚過ぎる男子に、私みたいな中性的な女子が相手にされる訳なんかない。




(でも、今だけなら)


チラッと見上げる一ノ瀬圭太の横顔。

この時だけなら独占しておける。
この位置をキープできる今が幸せだ。



「……あのさ、俺」


隣にいる男子から声が発せられた。
目線が合うと照れくさそうな顔をしてて、こんな奴でも女子の腕を掴むのは恥ずかしいのかな…と思った。


「俺、太田と一緒に学級委員できて良かった」


嬉しそうに言われて、益々胸の音が鳴り響く。


「お前反発してばっかだったけど、逆にいい張り合いになってた。お前落とせたら勝ちみたいな気分になれて、俺なりに面白かったよ」



「な…何それ」


勝利宣言?
そりゃ今、完全に私の負けだと思ってるけど。


「このまま二学期も一緒に委員できたらいいなと思う」


「わ…私はご免被るよ」


素直にならずにいた。
「私もやりたい」なんて言葉、言える関係でもなかった。


「ははは。だろうな」


一ノ瀬圭太はそう言ったまま外に出るまで何も言わなかった。

そしてクラスメイトに追いついた後も、私達はお互いに話をすることもなく帰宅した。