「子供時代は終わったの。もう大人なんだから」


ブランコも似合わない年頃になった。
中学生の頃と同じ気持ちで、ずっといたらいけない年齢。


貴方は社長として、これから社員を纏めていかないといけない立場で、私はその部下として、貴方に協力していくだけ。


同じ学級委員でいた頃とは違う。
ハイスペックな人の側には、それに相応しい相手が居ないと。


「こんなふうにしたらダメなんだってば。一ノ瀬君には婚約者がいるんでしょ?」


同窓会でも噂になるくらいの人が。
岡崎さんでさえも口にする人が。


「同級生だからって簡単に女性を慰めたらダメ。相手の人が可哀想過ぎる」


私が相手なら嫌だ。
一ノ瀬圭太が他の女性を抱き締めるのなんて許せない。



「…何の話だ?」

「だから、一ノ瀬君の婚約者のこと」


「誰がいつ、そんな相手がいると言った?」

「えっ…だって、同窓会でも噂になってたそうだし、前に岡崎さんが言いかけてたじゃない。『圭君には既に決まった相手がいる…』って」


「あの時、俺がそれを肯定したか?」

「し…なかったかも…と、思うけどぉ…」


でも、睨んでたじゃん。
怖そうな目つきでジロッとさぁ。


「あの時は焦って止めるくらいしか出来なかったんだよ。本人の居る目の前で、いきなり口にしようとしたから」

「えっ…」