『…大田?』
何だこいつ。
ちゃんと食ってんのか!?
『あーあ、美晴ってば、またダウンしちゃって…』
大田と仲の良かった柴田絵里(しばた えり)がやって来た。
『ごめんねぇ一ノ瀬君。美晴あれこれと愚痴ったんでしょう?…毎回飲むとこうなのよね。
お盆もお正月も、帰省の度に体調崩して寝込んでるそうなの。
今回も昨日まで調子悪かったみたいで。でも、今日は意地でも行くと言って来たから…』
しっかりしてよ…と声をかけるが、大田はちっとも顔を上げない。
柴田は困ったように息を吐き、バッグの中からスマホを取り出した。
『タクシーに乗せて送ってもらうわ。家に電話して家族に迎えに出て下さいって頼む』
こんな泥酔しきってる奴を一人で帰らせるつもりかよ。
『柴田も乗って帰れよ。このままだと途中で具合が悪くなってもいけない』
『ええ〜。どうして〜』
『頼む。俺が心配だから』
手を合わせて拝むと、柴田は渋々と引き受けてくれた。
大田の腕を肩に回して表まで連れて出た。
タクシーに乗せたら、ぼぅっとした目が開いて。
『……ありがと…』
嬉しそうに微かに笑った。
いつも怒ってる顔か、意地を張って強張った表情しか見せてこなかった奴が。
(……何だ。普通に笑えるんじゃん)
しかも案外と綺麗な笑顔だ。

