イジワルな彼と夢みたいな恋を?

「ちょ…ちょっと待ってよ」

「何?」

「それってそんなに簡単に合格できるもの?そもそも、一ノ瀬君は専務職に就いてたんじゃないの!?」


人事異動の紙にはそう記されてあった。
お父さんの事務所で実務経験をしてたのなら、出来る筈がない。


「資格を取るのはかなりハードだったよ。
でも、幸いなことに就活をしないで済んだ分、勉強に専念することができた。
肩書きだってそうだ。会長の孫ってだけで幾らでも付けておける。
大体俺みたいな若さで専務をしたって誰が付いてくると思う?会社というものはそこまで甘くはないよ」

「で、でも、今は現に社長をしてるじゃない!」


「それはじーさんの年齢を考慮して、補佐をすることにしただけ。流石に八十を過ぎたら体力も落ちてきてるからな」

「それじゃハウスデザインはやめるの?あの名刺は?」


「あれこれと喧しく聞くな」

「だって、謎だらけだし!」


ギシッとしなるスプリングにビクつく。
一ノ瀬圭太は立ち上がり、軽くスーツの埃を払った。


「あの名刺は資格を取得してから作った。ハウスデザインは続けたいけど、多分もう無理だと思う」


言い捨てるようにして部屋を出て行こうとする。
慌てて背中を追いかけ、彼の側に寄った。



「あの同窓会に参加したのは…」


背中を向けたまま一ノ瀬圭太が声を発した。
見上げる後ろ姿がやけに大きいと感じた。