イジワルな彼と夢みたいな恋を?

精一杯やり過ぎてクタクタなんだと言えば良かった。

もう辞めたいんだと話せば楽になれた。

サポートするだけじゃなくて、される側にもなってみたいんだ……と。



「……ありがと……一ノ瀬君に会えたから……それに、気づけた……」


素直になるのは難しいな…と思う。

悔しくもないのに涙が溢れてきて、無性に切ない気持ちに襲われる。

初恋の相手はいつの間にか手も届かない存在になってしまった。

気軽に話しかけられる相手でもないし、これが最期の接点で、もうこうして話をすることもなくなる……。



零れ落ちた涙を手の甲で拭った。
今日みたいな目出度い日に涙は良くない。

泣いてなんかいられない。
もう少ししたら関係者も集まってくる……。



「ごめん。喋り過ぎたね」


目頭を押さえながら無理にでも笑おうとした。
今更だけど、意地を張っておかないと自分ではない気がする。


話を変えるつもりでバッグの留め具に手を掛けた。
安川さんから預かった最期のパーツを取り出そうとして手を差し込んだら。



「…俺はもっと早くに大田を助けてやりたかったよ…」


一ノ瀬圭太の声が聞こえて顔を上げた。

きゅっと唇を噛む奴の顔が切なそうで、私はそれを目の錯覚かと思い瞬きを繰り返した。


「ずっと戻りたかった。あの中学校に。…大田達の居る場所に……」


寂し過ぎる目で見下ろされる。

複雑な言い訳が始まりそうで、身の引き締まる思いがしたーーー。