「大田だよな?」


二度目の確認をしてくる奴の顔を見つめ、どうしてそんなに聞き返すのよ…と思う。

鳶色っぽい瞳は開かれて、少しだけ丸くなってる。
ぽかっと空いた口が塞がらないといった状況で、何があった?と思い返した。



(あ……そうだっ!今日ワンピースだった!!)


普段とは違う装いをしてる自分に気づいて焦る。

隠れようにも逃げるみたいでおかしいし、そもそも穴なんてのも見つからない。

一つ思い出すと要らない事まであれこれと思い浮かんできて、冷や汗もかいてくる。



「大田…」
「ごめん!」


お互いの声が被り、視線がぶつかる。
逸らしようがなくなり、早口で続きを喋った。


「同窓会の夜、迷惑かけてごめん!私が言った言葉、気にしないでいいから。
いろいろあったけど悪いことばかりじゃなかったし、絵里は居てくれたし部活があったから気も紛れたし。
三年の終わりには少しは落ち着いたし、坂上君も協力的で助かったし。
それに何より、家の中が平和過ぎるくらい平和で…」

「大田!」


ビクッとする私の声が止まると、家の中にいた男が出てきた。

この間と同じように高価そうなスーツを着て、キラリと光るシルバーのタイピンを付けて。


「お前、幾ら何でも喋り過ぎだろう。同窓会の夜に言った言葉って何だ?『恨んでやる』発言のことか?」


「恨んでやる?」


ヒェッ。
まさかそんな恐ろしい呪いを掛けた!?