イジワルな彼と夢みたいな恋を?

それなのに私に対する態度は初日のままずっと変わらない。
隙さえあれば驚かしてくるし、何かとイタズラを仕掛けてくる。

モテて羨望の厚い人格とは反対に、どうしようもなく子供っぽいところを平気で見せた。



「不公平だ」


そう言って訴えたこともある。
でも、一ノ瀬圭太は「逆だ」と言い張った。



「俺は特別扱いをしてやってる」


「どこが!?」と言いたい。
向っ腹が立ち過ぎて、言い争っても上手く言い返そうにもないから我慢した。


七月に入った頃から時々隣の席の男子はぼんやりとしてることが増えた。

ぼんやりしてるからと言って、授業を聞いてない訳でもない。
先生の質問にはきちんと直ぐに答えてたし、授業前の小テストも必ず満点だった。


何となくだけどおかしかった。
笑ってる一ノ瀬圭太の顔が、時々急に沈み込むように見えたから。


一学期最後の委員会の後で、思いきって何か悩んでるのかと聞いた。


「何でそう思うんだ?」


廊下を歩きながら聞き返され、「何となく」と答えた。


「私の気のせいならいい。変なこと聞いて悪かったわね」


当時から10センチくらいは身長差があったと思う。
上から見下ろしてくる奴の目線にソッポ向けて行こうとした。



「太田美晴!」


二、三歩先に進み掛けた時、後ろから呼ばれて振り返ろうとしたら…。