ブランコが揺れる家の内装はまだ見てない。

そもそもブランコが部屋の中で揺れる家なんて実際に見たこともないから、どんな仕上がりになれば実現出来るのかも知らない。

そんなものを家の中で揺らしてたら、梁も柱も直ぐにダメになってしまうに違いない。

今ではそんなことを語った自分が、一番子供っぽかったと反省してる。


非現実的なことを口にした時点で、呆れられて当たり前だった…と思う。

あの話を聞いた時の、ぽかんとした一ノ瀬圭太の顔を思い浮かべる度に恥ずかしくなる。

今更、話自体は取り消せない。だけど、あの部分だけは消去しておきたい。


(でも、もう忘れてるよね。新年度から各支社を回って忙しそうだから)


このオフィスに来るのはいつ頃になるんだろうか。
ゆとりちゃん達の言うように、モデルルームの竣工式には顔を出して欲しいけど。


(完成予定日は月末の連休前か後だろうなぁ。二十四か二十五日辺りでなければいつくらいになるのかなぁ)


スマホのスケジュール帳を見ながら曜日や日付を確認する。
とにかく完成次第、中も外も見せて下さい!と岡崎さんには頼んでる。


(それにしても、あの岡崎さんも頑固だよね)


頑として、一ノ瀬圭太の素性について語ろうとはしなかった。
「圭君」と呼ぶところからして、かなり親しい間柄だと思うのに。



(ケチだ。ケチ)



やっぱり、一番の子供は私だな。