「甘い物を食べれば多少は落ち着くよ」


何度も落ち着くように…と聞かされてる時点で、自分がゆとりちゃん達以上に手の掛かる子供いみたいだ…と気づいた。



「……すみません。頂きます」


バカみたいにこんな所まで来て…と呆れだす。

絵里から同窓会での失態を聞かされた時に、さっさと彼に謝っておけば良かったんだ。



一呼吸ついたところで、岡崎さんとモデルハウスの建築現場へと向かった。
うちのオフィスにしては珍しい木造建築で、柱の横に立派な梁が渡されてある。


「俺からは何も教えられないけど、この家には圭君の特別な思いが込もってると思う」

「特別な思い?」

「それが有るからこそ細部にまで拘った。君達までもミーティングに参加させて、大事なものを一緒に作り上げていきたかったんだと思うよ」



『大事なものを一緒に…』と言われて、建築中の家を見遣った。

目の前に建とうとしてるモデルハウスは、私の語った夢の家と同じ。


タイルの張られた外観と、緑色の屋根が基本。
絵本の中に出てきそうなイメージで、家の中にブランコがあるの。



「そういえば、ブランコは…」


そう言いかけたら岡崎さんが「えっ?」と聞き返してきた。

「いえ、何でもないです」と言い直し、黙って瓦が乗せられようとしてる屋根を見上げる。



あの屋根の上に風見鶏が立つ。
きっと素敵な家になるんだろうな…と予感する。