中学時代も高校時代も大学時代も、社会人になってからもずっと、何処か周囲のことを冷めた目で見てて、(やってらんないよ)という気持ちをを持ちながら過ごしてきた。

私には何でも出来るし、言われなくても努力するでしょう的な考えを持たれてたようだったから、どんな困難があったにしても、意地を張ってやり通さないといけなかった。


でも、その根底にはいつも一ノ瀬圭太という張り合える相手との記憶があって、それが有ったからこそ、何事もクリアしようと頑張れた。

私にとって一ノ瀬圭太との思い出は今も心の奥で一番大事に残るもので、それがこの最近の触れ合いも重なって、一層輝きを増してた矢先だったのに、これ。


彼が私の思ってた様な相手じゃなかった…と知った今、これからは何を支えにしたらいいかも不透明でーー。



「一ノ瀬君は……一体、何処の誰なんですか……?」



知り得ないまま転校していった。
誰にも話さないまま、関東方面に越してしまった。


私の表情はかなり切羽詰ってたんだろうと思う。
手首を握ってた岡崎さんの手が離れ、左手を包み込んだ。



「それは俺から話すことじゃない。彼のことは、彼自身から聞きなさい」


優しいながらも厳しい目つきでそう言い、モデルハウスの事務所へ通した。

受付もこなす女子社員が美味しいコーヒーを淹れてくれて、ついでにGODIVAのチョコもどうぞ…と出された。