魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜




「これとかどうだ」


シロウさんが示したものは、濃紺に白のシンプルな小紋が入ったネクタイ。


じっと眺めてみる。



「お客様、そちらの商品は今若い方に人気なんですよ。
控えめながら誠実な印象に加えて、お値段がリーズナブルなのも良いですよね。
いかがでしょう?」


店員が近づいてきて、商品についての説明をする。


目が止まっては、こうして言葉を挟んでくる。


じっくり選びたいけど、これでは集中できない。



明らかに機嫌が悪くなっていく私を見てシロウさんが小さくため息をついて間に入る。


こうして態度から伝わってしまうのも、なんだかんだと付き合いが長いゆえの勘かもしれない。



「ああ、いいですね。ですがもう少し見て回りたいのでそういうのはいいですよ」


営業スタイルで丁重に断りを入れて、店員から離れる。


助かった、と息をつく。