そんな声が聞こえたと同時、脇を強引に抜け出ようとしていた私は、なおも壁に押し付けられるように強く強く、抱きしめられていた。
頭が真っ白になる。
どうしよう。どうしたらいい?
分からないことだらけだ。
痛いくらいに回された腕が、首筋にかかる息が、熱いくらいに熱を持っているような錯覚に陥って判断力は徐々に消え去っていく。
「…っや、めて……アサ……ヒ……っ」
どうにか振り絞った声は小さくて、身を捩ったはずなのに力は非力で。
全然歯が立たない。
「アリサ……」
艶やかな声に背筋がひやりとして、なに……と顔を上げた瞬間。
「ん……っ」
唇を、今までよりも強く感じる熱に塞がれて息が詰まった。
突然のことに状況を理解できない。


