これでは仕事を理由に回避などできない。
おそらく、アサヒもそれを狙って再度声をかけてきたのだろう。
この後の仕事は急ぎではないから、少しの間手持ち無沙汰だということもお見通しに違いない。
けれど私は素知らぬ顔で嘘をつく。
「ごめんね。まだやることが残っていて」
言いながらカゴを手に、そそくさとその場を去ろうとする。
「また後で——」
言いかけた、直後だった。
ダンッ——。
追い込まれたと気づく前に、私の背は壁に押し付けられて、覆い被さるようにアサヒの体が寄せられる。
彼の手が顔の両側に置かれて、まるで私を閉じ込めるかのようだ。
何が起きたか一瞬、分からなかった。
思考が現実に戻された直後、事の重大さに気付いてすぐに行動を起こそうとするけど。
「逃がさない」


