ちゅ……と生々しくも官能的な音を小さく残し、ほんの少し唇を離すと、何を堪能しているのかと思わせるような体制で数秒が経過した。
その後に。
彼はまるで焦らすようにゆっくりと顔を上げた。
私を見下ろす顔は、ひどく扇情的でいて、魅惑的。
……ああ、甘い。
声が、熱が、身体が、全てが。
甘くて、甘くて、ひたすら甘くて、甘すぎて。
ドロドロに溶けてしまいそう。
それは私の心臓を鷲掴みにして、私の中に生まれ、巣食った得体の知れないものを駆り立てる要因となる。
「ねえアリサ。君が本当は望んでいないのは知っているけど。
でも僕たちは、こういう事も勿論できる間柄だということ、覚えておいて」
その言い方に引っかかりを覚えたのは一瞬のこと。


