アリサがどうだと話していたから、それだけでも僕が手を出すには十分な理由だった。
今思えば、僕を乗せるための方便だったと容易に分かるけれど。
別に倒すのは難しくなかったよ。
人を殴るのには何も感じないんだ。
……やっぱり、聞くに堪えない話だね。だけど少しだけ我慢していて。
いつものように終わるはずだったんだ。
だけどその日はアリサが来る日だったんだね。
心配して探しに来た君は、初めて僕の所行を見てしまったんだ。
喧嘩に慣れていない君がね。
そんなことないって?
……確かに。実家にいた頃は、時々親の喧嘩が扉越しに聞こえていたよね。
家を離れた今はもう懐かしいけど、あの頃は騒音にしか感じなかったよ。
アリサには聞かせたくなかったほどだ。
で、お互いにどうしていいか分からなくなった。
フリーズ、といえばいいか。
そういう状態になったんだろうね。
動けなかった、あの時は。
けどすぐに、アリサが何か言ってくると思ったよ。
知られてしまったからね。


