無言でりんごをかじりつつも、なかなか目を合わせない私に痺れを切らしたのか、母親は私の頬を両手で包んで振り向かせた。
「……っ」
りんごが喉に詰まりそうになった。
咳き込みそうになるのを何とか堪えて、「何だ」と言わんばかりに睨みつける。
無理やりだ、この人たちはいつも。
向けられるのは愛情でも何でもない、押し付けるだけの醜いエゴ。
それでは私たち姉弟が本当の意味で振り向くことはないと、どうして分からないのだろう、この人たちは。
「そんな目で見ないでアリサ」
「その態度は何だ。
私たちがどれほどお前を愛しているか分かっているのか」
うるさい。黙れ。
たとえ偽りだとしても、私がいるそこにアサヒはいないくせに。
どうしてそう、勝手なことばかりを口にできるの。


