魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜




……なかったこと、にはされなかったけどどこか裏を思わせるような含み方。


何を考えているのか、やはり読めない人。


ぞくり、背を這う冷たい何かを感じたけれど、気付かないふりをした。




「では、また来ます」


刑事さんの言葉に、もう来なくてもいいという言葉を飲み込んで、無言で見送ると入れ違うように両親が声をかけてきた。


「今日はりんごを買ってきたのよ。好きでしょう?」


それはいくつの時の私の好みなのだろう。


今は別に好きではないけど、あえて言うことはしない。



知らないのなら、知らないままでもいいと思うのもそうだけど、教える気にならないのが本命。


私の好みなら、自分とアサヒさえ知っていれば事足りる。


何も教えてはくれなかった貴方たちと違って、互いにどちらかのために用意すればいいだけなのだから。